会社探検隊 電気通信バイオに応用 株式会社ダイナコム

朝日新聞 千葉版

会社探検隊
電気通信バイオに応用 株式会社ダイナコム

世界的に遺伝子情報の解読が進み、DNAの塩基配列を読み取る技術は格段に進歩した。しかし、その情報を整理・分析する技術はまだ確立していない。

そこに着目して塩基配列の情報を蓄積し、データ処理が効率的にできるデータベースを開発。数百個に1個の割合で見つかり、ガンなどの発病と関係しているとされる塩基の変異「スニップ」(SNP)を探し出すソフトウエアも作り出した。研究機関のホームページ作成や管理も請け負っている。

アイデアを思いつくと、ノートに書きとめる。やがて自分のアイデアと同じ製品を大手が開発したニュースを目にする。「お金はなかったが、製品のアイデアをたくさん持っていたので会社をやっていく自信はあった」。代表取締役の藤宮仁さんは設立当時をこう振り返る。

福島県出身。83年、東京電機大の大学院を出て日立デバイスエンジニアリング(茂原市)に入った。電気通信技術が専門で、人工衛星に積む集積回路などの開発を担当したが、バイオテクノロジーの時代が来ると確信し、日立グループの関係会社に自ら希望して出向した。

「DNAの塩基配列の中から同じようなパターンを探し出す方法論は電気通信技術と同じ」と藤宮さんは言う。日立時代に開発した機器は、親子を鑑定するようなパターン解析を20分で処理し、それまで数時間かかっていた解析作業を大幅に短縮した。犯罪捜査に威力を発揮し、米国連邦捜査局(FBI)にも採用された。

94年に出向先から戻るよう異動の内示を受け、これを機にバイオベンチャーとして独立することを決意。日立時代に知り合った仲間とともにダイナコムを設立した。

当時、まだ普及していなかったインターネットを活用し、バイオ関連の情報提供サービスを立ち上げた。「専用線の使用料が高く、月33万円の回線料のために働いていたようなもの」だったが、ネットのノウハウを蓄積した。同社の製品にもノウハウは生かされ、遺伝子情報の研究者がオンラインで情報を共有し、分析を進められるようにしている。製品の評判が徐々に広まり、研究機関への納入実績は順調に伸びている。

茂原市に本社を置いたのは「最初の就職先で、若いときに家を買ったから」。都心に出るのにそれほど時間がかからず、顧客とネットでやり取りすることも多いため、地理的な条件は苦にならないという。

「専門の電気通信をバイオ分野に応用したことで、オリジナリティーが発揮できたのかもしれない」と藤宮さんは語る。「この分野で勝負するには米国に出ないと面白みがない」と、5年後の米進出をめざし準備を進めている。 (岡田 徳周)

本 社 茂原市茂原643
(TEL 0475・25・8282)
代表取締役
藤宮 仁(44)
設 立 95年1月
従業員 28人
売上高 約1億8100万円
(01年6月期)