毎日新聞 千葉版
ちば・ベンチャー最前線
DNA読み取りソフト開発21世紀はバイオの時代。医学応用の研究にもヒトの遺伝子DNA(デオキシリボ核酸)の読み取りは欠かせない。しかし、DNAは塩基が長い連なりで形成されているため、機械で一度に読み取るのは不可能だ。
そこで、DNA読み取り作業は、いくつかのDNAを薬剤を使って分断したうえで、重複する部分をうまく重ね合わせながら慎重につなぎ、元のDNAを再現する。バイオ関連ソフトの開発などを行う「ダイナコム」(本社・茂原市)は、この手間のかかる作業をコンピューター上でより効率的に行うソフト「DYNACLUST」を開発した。
「通信とバイオ。両方の技術力があるおかげでできるんです」。社長の藤宮仁さん(44)はこう語る。
日立デバイスエンジニアリングの通信部門でLSI(大規模集積回路)を研究していた藤宮さんは87年、来るべきバイオの時代を予感し、自ら進んでバイオ関連を手がける日立ソフトへ移った。「自分で一から勉強し直し」、独力でDNA鑑定装置を開発。従来からあったアイソトープの代わりに、より安全な蛍光をDNAの読み取り装置に用いることに世界で初めて成功した。この装置は現在も米連邦捜査局(FBI)で使われている。94年、そんな藤宮さんに転機が訪れた。「突然、前の会社に戻れと上司に言われ、それじゃ、今しかない」と会社を辞める決断した。
ベンチャー企業を設立させるだけの下地はあったという。大学院時代、民間企業出身の指導教官から、「自分で研究費を調達できなければ、研究なんて進められない」と厳しく教えられた。その教えを守り、補助金や助成金などの申請を何度も自分で行い、研究費をまかなった。「資金調達のノウハウもそのころ身に着けた。だから、(ベンチャー企業設立には)抵抗感や不安は最初からなかったですよ」と笑顔で振り返る。JR茂原駅から南へ徒歩約5分のビル1階にオフィスを構える。従業員は26人のうち、生命科学分野の修士課程修了者を半数以上そろえた。藤宮さんは「顧客の大半が大学の研究者。同じレベルのバイオの知識を持った社員が、相手の要求を繰り返し聞きながら、最適なシステムを開発するのがわが社の特徴です」とPRする。
DNAの遺伝情報と病気の関係する情報とを照らし合わせて病気との相関性を調べるソフトや、実験で使うプレートの保管状況などを一括管理するソフトなど、続々と新商品を生み出している。
「通信技術とバイオが融合した『バイオ・インフォマティクス』は、これからの時代、もっともっと伸びるはず」と熱く語る藤宮さん。時代を先取りしたベンチャーの将来に大きな期待がかかる。【河内敏康】株式会社「ダイナコム」 藤宮仁社長 茂原市茂原643
業種 バイオ・インフォマティクス関連システムの開発等
資本金 3000万円
売り上げ 2億2000万円 (02年6月期見込み)
わが社のセールスポイント
情報技術に欠かせない基礎理論から真に理解しているので、製品開発も安心してまかせていただけると思います。