日刊工業新聞より
遺伝子研究 根底から支援 DNA解析・管理ソフトを開発
「自分が選んだ方向は間違っていなかった」。国内で数少ないバイオインフォマティクス(生命情報科学)関連のベンチャー企業、ダイナコムの藤宮仁社長はこう言い切った。同社は遺伝子配列の自動分類システムをベースに、デオキシリボ核酸(DNA)の解析・管理ソフトを相次ぎ開発。研究機関向けの受託開発やバイオ関連情報サービスを手がけるなど、遺伝子の研究を根底から支えている。
藤宮社長は日立製作所グループ企業の出身で、遺伝子配列の類似性を高速に演算するためのLSI、米連邦捜査局(FBI)向けDNA鑑定装置などを開発した業績を持つ。その時、統計に基づいて一定の確率をはじき出すアルゴリズムに触れる機会を得た。
ゲノム(全遺伝子情報)を活用した新薬、治療技術の確立に向けて期待が高まるなか、ぼう大な遺伝子情報をデータベースと照合、類似性を探るのは並大抵のことではない。そこでビジネスチャンスと考えた藤宮社長は95年1月、同僚らと同社を設立。現在、全社員のうち、半数以上の14人が生化学系の修士課程修了者で占められ、同社を支える原動力となっている。
主力製品の一つである遺伝子の配列を自動的に分類するシステム「ダイナクラスト」は、東京大学医科学研究所の菅野純夫助教授らの指導を受けて開発。米政府系機関が保有するDNAのデータベースと照合、ネット上に送られたDNAの配列情報を交互に比べ、新規性を探る。東大医科研、国立放射線医学総合研究所などに納入実績を持つ。
産学の結びつきは強い。遺伝子のわずかな差である「スニップ」と病気などの因果関係を調べるソフト「スニップアライズ」は、東大医科研の井ノ上逸朗助教授との共同開発だ。また、開発力を買われて理化学研究所、ヘリックス研究所などに社員を派遣している。
遺伝子情報の臨床分野への応用が現実味を帯びるなか、2月にはDNAチップの設計支援ソフト「プローブクエスト」を発売した。チップにのせる遺伝子と配列データベースとの相同性を検索、特異性の高い遺伝子領域を自動検出する。これに先駆けて、1月には世代間のスニップを解析するシステムの開発で、中小企業創造活動促進法の認定を受けた。さらに実績を伸ばして「5年以内に株式公開を目指す」(藤宮社長)と意気込んでいる。
(火曜日に掲載)▽本社=千葉県茂原市茂原643、0475・25・8282▽社長=藤宮仁氏▽設立=95年▽売上高=1億8100万円(2001年6月期)▽従業員=26人▽遺伝子配列管理システムの開発・販売、バイオ関連のインターネット情報提供サービス